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どうやら梅雨の明けた夏の１日、どこで泳ごうか、と考えた。
海か山か？海はいいけど、どこの海へ行く？大磯は汚いぞ。江ノ島なんて芋洗い。
じゃあ、お手軽はやっぱり山かな。
花岡さんが小川谷へ行くのに乗っかってしまおう、ということで、私も小川谷へ
出かけることにした。
昔何度か行った小川谷はいつも曇天で、美しいけど寒い所というイメージである。
谷そのものは大して難しいところはなく物足りない位だけど、最初のチョックスト
ンの滝はいつも左から登ったので、もろに水流に頭を突っ込み息ができなくて大変
だった印象がある。だから、チョックストンのところを右から登ればあとは大丈夫、
と思った自分が甘かった。
精進せずに過ごした年月は正直である。
思い出しもしなかった最初の堰堤状の滝で、既に足元が怪しい。
掌も足の裏も冷や汗をかきドキドキしながら、顔は何事もないかのようにＦ１を
越した。
次のチョックストンの滝は、もちろん右から。中段であたふたしつつ、何とか登る。
泳ぎにきたのに、冷や汗ばかりかいて、いっこうに泳ごうという気になれない。
先週の小川谷組は、梅雨明け前のスパルタ寒中水泳行だったらしい。
気の毒なことである。
今週はお蔭様で,谷の上にはお日様が照っているけれど、それは頭上遥か上のこと、
谷底までは、もちろん日は届かず、水もそれなりに冷たく、おまけにささいな事で
冷や汗の連続で、心置きなく泳ぐような雰囲気で無いのは、先週の皆さんと同じで
ある。
それでも、早くも次の滝で淵の中に腰までつかるはめになった。
結構寒いじゃないか！やっぱり、小川谷はいつ来ても寒いのだ。
寒い寒いと言いながら、左から越す。
折角泳ぎに来たのに、こんな状況では目的達成が危ぶまれる。
とにかく、私がここへ来た最大の目的は沢登りではなく、沢泳ぎなのである。
ただ、登っているだけでは今日、わざわざここへ来た意味がない。
歩いているうちに浅い淵が出てきた。
別に泳がなくても簡単に行けるけど、深呼吸して淵に飛び込んだ。
先行く二人の後ろでこっそり泳ぐ。なんだ、気持ち良いジャン。
次の２段の滝は、北嶋さんのあとについて、大西、花岡と登って行く。
入渓点で、自らの登攀技術に疑心暗鬼になっているので、大した事無くてもおっか
なびっくりである。北嶋さんは難無く登り、私は足踏みしながらもどうにか上へ這
い上がり、花岡さんはお助けひもを少々掴んで越した。
花岡さんも久しぶりで勘が狂っているようだ。
さらに次の滝だが、昔、私は左端から登ったような気がする。
しかし、左から登るのであれば、水流にある程度突っ込みながらチムニー登り、
という、できなくもないが何だか嫌な状況で、どうしようと逡巡していると、
北島さんが花岡さんの肩を足場に中央から越して行った。
結局私も同様にして越す。ヤレヤレ。
大岩スラブ滝上の陽だまりで休憩する。イワタバコの花が真っ盛りで何とも美しい。
葉は随分大きく、花の色はアカムラサキ色、私の印象はアオムラサキだったけど、
今日見ると赤の色の方が強く、葉も大きい。こんな見事な群生は初めて見るような
気がする。こうして花に見とれているうちに、寒くなってきた。日が差してもやは
り谷の底、水も冷たい。もう足も水に突っ込みたくない位寒くなってしまった。
しかし、ゴルジュが現れる。とことんへつっていたけど、にっちもさっちも行かな
い小滝が出てきた。滝の取り付きの手前にはツルツルの壁に囲まれた淵が横たわっ
ている。へつりたい。でも、落っこちそう。どうしよう。
「もう、泳ぎましょうよ！」と一声後続へ激励の言葉を残し、北嶋さんは淵を泳い
で行った。仕方ない。そうそう、私は泳ぎに来たんだっけ、と水に飛び込んだ。
再び水に入ってしまえば楽しい夏の沢泳ぎである。
そんな楽しい沢泳ぎの中にも、スリリングな所もある。最後のゴルジュの中、泡立
つ淵を横切って滝に取り付かねばならない。北嶋さんはサッサと行ってしまった。
覚悟を半分位決めて飛び込んだが、弱気な私は案の定押し戻された。
「右から流されながら取りつけって言ったろオ！」と花岡さんの罵声を浴び、再度
挑戦、もがきながら滝の下の手掛かりを掴み、ヒイヒイ言いながら這い上がった。
ま、こんな私でも、やればできるか。
全行程の中で、ザイルを出したのは、２段大滝と最後の滝の２箇所のみ。
いずれも北嶋さんが軽々とリードし、私は引張り上げていただいた。日頃の鍛錬不
足のお陰で、私にとっては随分グレードアップした小川谷を味わうことができた。
あっけなく終わりを迎える小川谷遡行を終え、最後の川原でランチタイムの後は、
釣り師との噂高い花岡さんの釣りする姿を、実際に目にすることができた。
しかし、魚は・・・あと一息のところで、水面下へ。
今日のところはテンカラデモンストレーションで終わる。
私は釣りよりケバリに魅了されてしまった。
魚とのご対面は次回に回し、帰路につく。下山道は崩壊著しい。注意されたし。
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