2009年8月　二口山塊　名取川／大行沢

報告：大西
地域／ルート	仙台市／二口山塊　名取川／大行沢
目的・方法	沢
期日	2009年8月12日(水)
参加者	大西　（１名）
行程	6：30登山口---8：30ケヤキ沢---9：00大行沢---10：30ナメ入口---　 11：20避難小屋　－　峠手前　－　13：10避難小屋　－　13：20北石橋分岐 ---14：10北石橋---14：50北石橋分岐---15：40ケヤキ沢---16：40登山口
天候	晴れ
報告	未明、目が覚めると、東の空が白んでいる。昨晩は霧雨が降っていた。地元の方が、数日間雨の降らない日は無かった、と言っていた。もしかすると、今日、そんな天気に終止符が打たれるのかも！空の表情が刻々と変わる様が美しい。昨日まで山に入ろうかどうしようか揺れ動いていた気持ちは、太陽の光を見て、一瞬にして入山しようという気持ちになった。しばらくして車が数台ビジターセンターの駐車場に到着する。年配の男性が「先生について北石橋を通るコースへ」との事。昨日まで全く入山者の気配の無く心細かった山域が俄かに活気つく。さあ、支度をして出かけよう。　ビジターセンターの駐車場から登山口へ車を移動すると、３人組が幕営している。佐賀、所沢、山形№の車。大学時代の仲間が集まって、大行沢を竿振りながらゆっくり遡行するとの事。うーん、羨ましいプラン。そして、これは益々天が味方をしてくれているようだ。万が一何かあっても、後続パーティーが発見してくれるでしょう！？　よーし。行くぞ。といちいち掛け声を自分にかけないと足が前に進まない気分もちょっと残っている。雨は降っていない。しかし、明け方の陽光はどこへやら、現在は晴れ間も無い。昨日も、秋保温泉郷で晴れていても登山口は雨だった。やっぱり今日も雨が降ってくるかもしれない、と気にしながらの入山。盤治岩は見えるだろうか。足元はかなりぬかるんでいる。不快。早速靴下をネオプレーンに履き替えた。これで水溜りもなんのその。しばらく水平なぬかるみを進む。小沢を越し、白滝沢を過ぎ、登山道は高度をあげ大行沢を離れていく。程なく雨滝。なるほど、雨が降っているような滝だから雨滝。周辺のブナの林の美しい事。初めての山域なので、入念に２万五千の地図と照らし合わせつつ前進。京淵沢が見えてくる。主だった沢や滝には表示があるので、位置確認しやすい。盤治岩の見晴台に到着。ガスの向こうにかすかにそれらしい影が見えるが、よくわからない。帰途に期待。ルンゼを１つ越し、ケヤキ沢に到着。ここから沢に下る事とする。折角だから、いつでも泳げるよう上下ファイントラックに着替えて、ウォータースライダーのようなケヤキ沢を下降。水量が多く、水勢に負けるせいもあり、何となくシグマのフリクションが効かない。ソロソロと下りていくと沢の合流点手前に滝２段。なんてことない滝なのでクライムダウンできそうだけど、フリクションは効かない気分になってしまっているので、最初の滝は右手の立ち木にシュリンゲ引っ掛けぶら下がりつつ下降。（ザイル出そうか、と思ったけど、端折ってシュリンゲ。膝ぶつけて痛い。）２つめの滝は左手の藪を漕ぎつつ下降。ようやく大行沢に到着する。水の濁りはほぼ無し。水量は少なくは無いが、何とか行けるだろう。　まずは、右岸へ渡渉。ムム結構水量多い。ちょっとお尻が濡れる位だけど水流が割合強い。これ以上多いと渡渉は困難かも。慎重にすり足で進み問題無く渡渉できて安堵する。ああ、このドキドキは夏ならではの醍醐味。程なく、前後に大きな渕を抱えた滝が見える。岩魚の潜んでいそうな渕だが、ここは、魚止めの上だから、いるはずはない。今回の沢は魚影を拝めないのが残念。（釣る訳ではないけど）この滝は問題なく通過。すぐに、連続して滝がかかっているのが見える。1つ目は登ったが、2つ目、これは無理。左岸に踏み後があるので巻く。沢は右に曲がり、3つ目の樋状の滝。行けそうだけど水量多いし一人だし、やめておく。もう一度巻き道に戻り、続きを巻いた。巻き道は良く踏まれていて助かる。　滝の連続したミニゴルジュを過ぎると沢は開けて、傾斜の無いナメが続いている。ブナ林に包まれた穏やかなナメの世界に、この上なく幸せな気分で一休み。しかし、美しいナメにも厄介な事が潜んでいるのに気づいた。歩き出すと、幾らナメだとは言え、時々深みもあり、足元をみていないと危ないが、水流がソコソコあるので、常に足元を見つめる事になる。そうすると何だか目が回ってくるのだ。ナメ沢を歩いていてこんなに目が回りそうになったのは初めて。対策は時々上を向いて深呼吸。　しばらく歩くと沢はインゼル状になり、一旦ナメが途切れ、さらに小さな滝が連続して3段。左から大き目の沢が入ってくる地点を通過すると、またナメの連続である。時々小滝を越える。滝下の淵をへつりながら下界の事で考え事をしていたら、滑ってドボンと水中に落ち首までつかってしまった。アーア、結局全部濡れてしまった。こんな事なら途中、泳いでも良かったなあ。　地形図を見ると、そろそろ避難小屋ではないか、と思う頃、行く手左右に5ｍの堂々たる滝がかかっている。どっちへ行くにしても、この滝を越えないと先に行けない。本流は右だろう。滝は登れないこともなさそうだけど、やはり、水量が多いのでやめる。滝の少し下流の右手壁に取り付き、ブッシュを掴んで登る。ブナ林の向こうに避難小屋の屋根が見える。着いた。これで、この夏の目的は達成。空に晴れ間も見えてきた。　さて、これからどうしよう。当初予定の大東岳は日程短縮の為中止。でも、どこかピークを踏んでおきたいな、という事で、小東岳を目指す事とする。大行沢改め樋の沢の対岸に渉る。結構水量が多く、万が一足を取られると５ｍ滝まで持っていかれるので、少々緊張した。対岸の登山道は大して高度を稼ぐ事もなく、その他の枝沢とつかず離れずで、水には不自由しない登山道だ。相変わらず人が誰もいない。今朝会った人々はこちらまで来ないはずだから、他に入山者がいないなら、最低でも半径２ｋｍ位は私一人だろう。もしかすると、熊の数の方が人間より多いかも。できれば会いたくないなあ。　あと一登りで小東峠へ出そうだが、この辺から道が藪めいて鬱陶しい。沢沿いなので、水辺の植物たちが生い茂ってしまったようだ。登山道なのに藪を漕ぐのはゴメンだ、という訳で、あっさりこの先を登るのはやめた。元来た道を戻る。避難小屋へ着くと1時前。結構良い時間になってしまった。15分程下ると北石橋への分岐点となる。時間は押しているが、行ってみる事とする。なんと大行沢を横切って対岸に道が続いている。今朝の年配の方達はここを渡渉して行ったのか？また、対岸にはひとり幕営の支度をしている青年がいる。沢の水量が多いので渡渉地点を選ぶ余地無く、申し訳ないが天場を突っ切らしてもらった。ごめんなさい。カメラ抱えているし、対岸に上がるにはそこしかなかったの。　沢を渡るとひたすら登り。でも踏み後はしっかりしている。沢を1本越え登り返し、そこから藪の中を沢へ向かって下る。ハリブキやらアザミやらの藪でうっかり掴む訳にもいかない。20ｍ程おりただろうか。おお、これが北石橋。巨大な天然の石のアーチができている。さて、天然の石橋に無事たどり着いたが、時間が気になるので早々に戻り始める。往路とは違って、ほとんど下りなので、ちょっと気楽。大行沢を再び渉り登山道へ戻ると、ひたすら下る。もう３時。途中登山道は迂回しており、早く下りたいのに上へ上へと追い上げられる。遠くケヤキ沢が見えてきた時には、少しホッとした。帰途も盤冶岩は見えず。人影も無い。ガスの立ち込める静かなブナの林をたった一人。時間に余裕があれば楽しめるのだけど、もう夕方に近い時間となり、走るように下る。雨滝、白滝沢、と過ぎるとあと少し。小沢を過ぎ、広い林道状をしばらく歩くと登山口に着いた。　車に乗ろうとするとすごい数のアブが思いっきり唸りながら飛び回っている。お願い、車には入らないで！と叫んだところで効果なし。やはり東北の山である。　帰りの温泉は、前夜二口温泉に入ったので、名だたる作並温泉に寄ってみた。日帰り温泉が設備完璧で700円でした。 ●栗駒山周辺情報（2009年8月11日現在）今年の夏、栗原市で「栗駒」がキーワードの勉強会があった事から、これは栗駒山へ登るべし、というお導きのような気がして、直前まで迷った挙句、栗駒山へハイキングを試みる事とした。地震災害以降の栗駒山周辺がどうなっているのか、気にはなっていながら、具体的な事を知ろうとしていなかったのだが、今回の計画をきっかけにアプローチについて調べてみた。結果、栗駒山へのアプローチは、関東方面からアプローチし易い登山口は全て通行禁止となっており、唯一可能なのが須川温泉のみ。地元の方々には周知の事であった訳だが、関東に住んでいる私は全く状況を把握しておらず、他人事でいた自分を反省した。　有名な駒の湯が土砂に埋まった痛ましいニュース、また、湯の倉温泉がダム湖の底に沈んでしまった悲しい事実は一応知っていたが、さらに、その周辺の道路は未だに全て立ち入り禁止になっているという状況は今回初めて知った。栗駒山を東から時計回りに取り巻く国道は通行禁止、従って、宮城県からのアプローチは全て閉ざされている。　そのような訳で、唯一可能な登山口が須川温泉からのアプローチなのだが、須川温泉に近づく事が、これは又かなり大変だった。栗原市から須川温泉に辿りつくには、栗駒山の西側を通っている国道108号線から行くのが良い、と教えていただき、一度鳴子方面へ出て、鬼首をかすめて、北上していく。道路の行き先表示は、湯沢、横手とあり、関東の人間にとっては、思いがけず随分みちのくの奥まで訪ねる事になった。湯沢市街を抜け、国道342号線を東へ向かい、岩手への道を右にそれて須川温泉に至る国道の山道は、途中数箇所が片側一方通行となっている。これも地震による道路崩壊の復旧工事中の為である。鳴子温泉からタップリ２時間半の時間をかけて、やっとの事で、須川温泉に辿りついた。　ちなみに、須川温泉へは子安峡からもアプローチ可能のようで、そちらから行けば、もう少し時間の短縮が可能だったかもしれない。　栗駒山そのものは、ハイキング予定の8月10日が時折強くなる雨とかなりの風の為、登る事は断念。須川温泉に入湯して山を降りる。このような天候で、八久和組がどうなったのか、大変気になった。よもや入渓はしていまい、と思い、また、携帯の電波は比較的届く、と言っていた事から、連絡を試みるが、反応無し。今にして思えば、極限状況の真っ只中だった訳で、携帯そのものも、手元に無かったのだろうから反応無い訳だ。　さて、時間もあるし、奥州平泉でも訪ねてみようか、と思い立ち、今度は国道397号線に出て岩手方面へ行ってみる事とした。（ちなみに国道342号線の岩手県エリアは通行禁止である。）左手に焼石連峰を見ながらのドライブになるのだが、生憎の雨で何も見えない。とにかく標高は上がって行く。途中の県境のトンネルは夜間（確か20時から７時だったか？）通行禁止。片側一車線規制の為のようである。トンネルを抜け、岩手県の道路に入ると通り抜ける事はできるものの、かなりズタズタになってしまったようである。胆沢ダムに至るまでの半分近くは片側１車線の交通規制の下、道路復旧中。つづら折りの山道が片側一車線の上、現在未舗装部分もかなりあり、ちょっとした林道を走っているような気分だった。焼石連峰も尿前からの登山口は閉鎖になっているようだ。このような岩手側の状況を考えると、須川温泉に至るには秋田方面から回るのが最も無難と言えそうだ。そう考えると、現在の栗駒山はかなり遠い山になってしまった。　地震のもたらした被害はかなりのものであったのだが、何せ人口の少ない地域故、人命の失われた数は大都市の災害に比べると、幸い少ない。それ故、結構な被害がもたらされているにも関わらず、他地域の人々の記憶から遠ざかりつつあるようである。現に、身近にいる青年は「東北に地震ありましたっけ」というような按配である。　ちなみに、８月８日から11日まで栗駒山の周辺にいたのだが、一度も山の姿を見る事がなかった。翌日の11日、秋保温泉方面にて出会った方の兄上が高校時代に冬の栗駒山にて遭難されたとの話を聞き、行くのであれば、そのような悲しみの山でもある事を想いつつ、栗駒山の姿を眺めようと思った。


白滝沢付近	登山道にて	京渕沢

ケヤキ沢	ケヤキ沢最後の滝	大行沢、水量多し

ナメの始まり	最後の滝。すぐ上が避難小屋	避難小屋

北石橋	北石橋付近	北石橋付近

大行沢、北石橋への渡渉点	タマゴダケ。たくさん見ました。

2009年8月 東北・仙台市／二口山塊・名取川・大行沢（おおなめさわ）

2009年8月　東北・仙台市／二口山塊・名取川・大行沢（おおなめさわ）